MECHATU-Aの「パーペキヒーロー」歌ってみたが凄いという話
初めまして。別荘です。
この記事はある歌ってみたについて、一にじさんじリスナー兼歌ってみた好きの身から語っていこうという内容になっています。要はオタクの自己満足である。
別に専門知識があるわけでもない、ただの一般雑食音楽オタクの感想となりますが興味のある方はお付き合いください。
MECHATU-A初の全員歌唱
2023年9月30日に、こちらの動画が公開されました。
Vtuber事務所のにじさんじに所属する8人組ヒーロー『MECHATU-A』による「パーペキヒーロー」の歌ってみた動画です。
MECHATU-Aは東の4人組『Oriens』(赤城ウェン,宇佐美リト,緋八マナ,佐伯イッテツ)と西の4人組『Dytica』(叢雲カゲツ,伊波ライ,小柳ロウ,星導ショウ)で構成されるユニットで、この歌ってみたが公開されたのはOriensデビューからちょうど半年という記念すべき日でした。Dyticaは彼らの1ヶ月後にデビューしたので、実質的なハーフアニバーサリー記念動画であるといえるでしょう。
これまでは彼らの個人やペアでの歌ってみたは何本か公開されていますが、全員歌唱はこれが初めてとなります。しかもこの情報が9月20日のマリオカートコラボ配信ラストに突然投下されたため、リスナー達は見事にお祭り騒ぎの様相を呈しました(そして私もその1人である)。しかもプレミア公開まで曲のタイトルはおろか、サムネイルも伏せられた状態で待ち惚けをくらうこととなり、リスナーの情緒はどんどん不安定になっていきました(そして私も以下略)。
焦らされに焦らされて迎えた30日、遂に満を持して披露されたのがこの動画というわけです。こいつらオタクを転がすのが上手すぎる。
「パーペキヒーロー」について
本題に入る前に、「パーペキヒーロー」を聞いたことがないという方はここで是非とも聞きにいって頂きたいのです。というのも、歌ってみたというコンテンツの醍醐味はやはり「歌唱者がどのように原曲を解釈して歌に落とし込んだのか」という点が見えることだと個人的には考えているので、原曲を知っておくとより歌の破壊力が増します。この感動を味わってほしい……(というより、私の感想は基本的にこの思想が下敷きになっているため把握して頂けるとこの記事が読みやすくなるかもしれません)。
では、こちらがカバー元となった動画です。
いや面子えっっっっっっっぐい。
歌ってみたシーンを追いかけてきた人なら絶対に一度は名前を耳にしたことがあるであろうメンバーが勢揃いしています。当然私も全員存じ上げています。そしてこの曲、全員が個性の立つ歌声の持ち主であり尚且つ歌唱力の高さでそれが調和されているという、カバーするには中々ハードルが高い面があります。
じゃあこれをヒーロー達が歌うとどうなったのか?
結論から言うと
マジでやべぇ。
……もちろんこれだけでは終われないので、何が凄かったのかを詳しく解説していきます(どうでもいい話ですが、私は長らく歌ってみたシーンを追っている身でもあるのでこの選曲が嬉しすぎて興奮のあまり動悸が起きました。貧弱)。
「パーペキヒーロー」歌ってみた解説(という名の怪文書)
まず全体を通して言えることですが、
「さてはこいつら原曲がっつり聞きこんできたな?」
初見視聴時私はこのように感じました。というのも、所々のパートがまぁ~~~~~原曲を彷彿とさせる歌い方になっているわけですよ。こういうことされるとオタク大歓喜ですよ本当に。
とまぁ下らない前置きはこのくらいにして、各パートごとに感動したポイントを記していきます。
補足情報:本人達から語られた役割分担は以下の通りです。
- 選曲 伊波ライ
- 歌詞割 星導ショウ
- ボーカルディレクション 伊波ライ,緋八マナ
【歌唱担当者・歌詞】
赤城 「いつかあの日のボクらみたい 覆面 顔を隠し」
宇佐美 「あっちこっちで次元を超えて 大の流行中って話さ」
はい始まりましたトップバッター赤城ウェン。彼は元々柔らかさのある爽やかな声質の持ち主なので出だしの掴みには本当にピッタリなんですよね。因みにこの男、可愛い系の曲も治安悪化系の曲もいけるタイプです。ズルだろこんなん。
そしてそこに続く宇佐美リト。彼の歌は個人での歌ってみたや歌枠などで既に披露されていますが、曲が違うとガラッと雰囲気が変化する歌声の持ち主なのです。根底にはパワフルさがありますが、伸びやかに歌うことも荒々しさを前面に押し出すこともできます。何人いるんだこの人?そして今回もその特性が遺憾なく発揮されており、ここでは赤城の爽やかさとの対比が聞いた力強い歌声となっています。
星導 「寄っておいでのデジタリティ」
叢雲 「そっぽ向いたら見なし余生」
伊波 「置いて枯れちゃう身の上に」
小柳 「肩身の狭い正義の翼」
さてここでDyticaメンバーの畳み掛けです。星導と伊波のパートはどちらも裏声から入っているのですが、これを実際やろうとするとまあ難しい。裏声って中々安定しないので、歌い出しでこれをバチっと決めてくるあたり2人の歌唱力の高さの成せる技でしょう。それと伊波の「身の上に」の発音の仕方、マジで本家と似すぎ。ここ聞き比べポイントです。
叢雲カゲツは今回オクターブ下での歌唱となっています。彼の地声が元々低めであることも相まって、この低音がいいスパイスとなっています。そもそも原曲が高音域から低音域まで揃っているので、低音域担当者がいることでより原曲の雰囲気を醸し出すことが出来ているのではないでしょうか。
このパートで特筆すべきはやはり小柳ロウでしょう。彼の担当パートですが、原曲では超学生氏が歌唱しています。小柳は彼のファンであることを公言しており、今回の歌ってみたでは本家の歌い方を強く意識したものとなっています。
超学生氏といえばドスの効いた迫力のある歌声の持ち主であることで知られており、喉の奥深いところで発声することが多いです。対して小柳は普段の話し声こそ落ち着いた低音ですが、以前彼が公開した歌ってみたではクリアでよく通る声という印象が強いです。そのため、今回はこれまでにはないガラの悪さをまとった歌声且つ本家を意識した喉の奥から発したような声という合わせ技を見せてきました。特に「正義の翼」の部分が分かりやすいと思います。因みに私はここのパートのおかげ(?)で墓を建てたオタクを既に何人か目撃しています。気持ちは分かるが生きてくれ。
宇佐美・佐伯 「かませ かませ かまされる前にかませ」
赤城 「順応性 想像託そう」
佐伯 「やっぱりセルフィ― ちっとも慣れない」
緋八 「それでもボクを探している 君に捧げましょう」
ここからは打って変わってOriensのターンです。まず宇佐美と佐伯の「かませ かませ」ですが、ただ歌うのではなく少し溜めが入る歌い方となっています。細かく説明すると「かませ」の「ま」の直前に小さい「ん」がある発音の仕方になっており、個性が出ているポイントです。
この後の赤城、佐伯、緋八の流れですが高音→低音→高音という落差で振り回してきます。さながらジェットコースター。
ところでこの佐伯イッテツという男、実はこの歌ってみたが実質的に正式な歌声初披露となります(正確にはにじさんじ公式番組での歌唱がありましたが、有料パートでの披露だったため除外しています)。佐伯の声は渋さのあるよく響く低音で、初見の人からは高確率で「声がいい」と称されるほどです。じゃあそんな人の歌声ってどんなもんなのか?
おい上手いじゃねぇか。
いや上手い。普通に上手い。ピッチ(音程)安定してるしなにより発声がいいから声が良く通る。頼むからもっと自信持ってくれ。
そしてMECHATU-Aの中でも特に歌上手人の1人である緋八が続きます。
この部分まっじでやべぇ。
どういうことかというと、原曲ではこのパートは天月氏が担当しています。彼は少年的な明るさのある声で有名ですが、ここ緋八マナは完全に寄せにいってます。何故そう言えるのかというと、緋八の歌声はどちらかというと大人びた印象が強く、子音をはっきりと発音するため言葉の輪郭がクリアに聞こえるタイプの歌い方です。しかしここでは母音が強めに出た発音で、声色もかなり少年性が出た柔らかい歌声となっています。貴方そんな歌い方できたの!?先に言っといてくれません!!???
全員 「パーペキヒーロー さあ身を正せ 1抜け四の五の言わせるな
時代錯誤感に目を逸らせ それでもボクら正義の心臓」
ここの音のはまり方がま~~~~~~~~~気持ちいい。全員異なる個性の歌声なのにユニゾンになった時の一体感がとんでもない。このサビで脳汁溢れ出てきますよ本当に。
なんでこんなに聞いていて気持ちがいいんだ?と思っていたのですが、後にディレクションを担当した伊波からその答えが明かされました。
彼曰く、サビの部分では全員のアクセントが揃うように意識したとのこと。歌詞に印をつけながら、全員に同じ部分を強く歌うように意識してもらったそうです。だからこそここまでのシンクロを生み出せたのだなと納得しました。
宇佐美・伊波 「それゆけ 花咲かれば上々」
佐伯・叢雲 「たとえ火の中 仰せのままに」
Oriens 「ボクらは戦うパーペキヒーロー」
ここも高低差が効いたパートになっています。特に宇佐美・伊波ペアですが、男性にとってはかなり高いキーで見事に歌い上げています。そこからの佐伯・叢雲の低音コンビで締まりが出ており、複数人歌唱ならではの良さがこれでもかと発揮されています。
そしてOriens4人によるユニゾンです。実は先に言っておくと、この後に同じ歌詞の部分をDyticaで歌うパートがあります。各ユニットの色の違いも楽しめる、素晴らしい構成ですね。歌詞割担当(星導)天才だろ。
小柳 「マッチポンプでもなければ あくびが止められない」
星導 「こんな平和な世の中じゃあ ああ お役御免みたいって話さ」
このパート、一言で表すなら「テクニカル」です。小柳は1番と打って変わって余裕綽々な歌い方となっており、特に「止められない」の「ない」で力を抜いています。星導に関しては全体的に上品かつ脱力感のある歌声ですが、「ああ」で揺らぎを入れてからの「話」で突然がなりを入れてきます。この部分、原曲で担当しているそらる氏,少年T氏は比較的ストレートな歌い方をしているので、恐らく彼ら自身で加えたアレンジだと思われます。こういう違いを見るのが楽しいんですよね。
それはそれとして、お前ら揃いも揃って軽率にオタクを殺しにくるな。
緋八 「何かなるなるで出直せ」
赤城 「それで地獄へおいでませ」
宇佐美 「すったもんだの繰り返し」
佐伯 「出しそびれた正義の御業」
1番とは反対に、今度はOriens4人の畳み掛けです。個人的にはここの歌詞割が気に入っていて、特に普段の配信では陽気でふわふわした印象のある赤城ウェンが「地獄へおいでませ」を歌うのが自分の中の何かにぶっ刺さりました(突然の性癖告白)(誰得だよ)。
歌い方については、緋八の「出直せ」の「せ」でのしゃくり上げ、赤城の裏声入り、宇佐美の「繰り返し」の発音の仕方、佐伯の「出しそびれた」でのがなりのかけ方と、本当に四者四様の注目ポイントがありますがキリがなくなるのでこの辺りにしておきます。オタクの悪い癖である。
小柳・叢雲 「かませ かませ かまされる前にかませ」
伊波 「いつだって信じてくれた君のもとへ」
今度はDyticaのターンです。1番での宇佐美・佐伯ペアの力強さが出ている「かませ」とは異なり、こちらはかなりフラットな歌い方となっています。また小柳も叢雲も比較的声が低めなため、底知れない不敵さをまとった歌声だなと感じました。
そして伊波のパートです。この部分、原曲では人間卒業ハイトーンボイスでお馴染み(私が勝手に言っているだけです)まふまふ氏が担当しています。ここは地声が高めであり歌い慣れている伊波ライを当てるのが最適解だなと本当に思いました。サビへ向かって盛り上がる部分なので本人のプレッシャーは相当なものだったと思いますが、やはり見事な出来となっています。
全員 「パーペキヒーロー さあ手を叩け エンドは誰が決めさせるか
敗色が順当に逆巻けば むしろ高鳴る正義の心臓」
2サビも1サビ同様声の混ざり方が気持ちよすぎる。
あと、これは歌というより曲の話になってしまうのですが、「敗色が順当に逆巻けば むしろ高鳴る正義の心臓」って歌詞マジでいいんですよね。個人的に、この8人は全体的に根性があるというか、逆境に立たされた時の強さがあるなと普段の様子から感じているので相性が良いと(勝手に)思っています。
赤城・緋八 「ここら一帯も夢の延長」
小柳・星導 「そこに確かに君がいるなら」
この部分は伊波曰く、可愛さとカッコ良さの対比となっているそうです。実際に聞いてみると確かに赤城・緋八ペアはかなり明るいトーンの歌声で、小柳・星導ペアは体感温度低めのクールな歌声となっています。このパートは1番でもコントラストが強く出ていましたが、歌う人間が違うとニュアンスも大きく変わるので聞き比べると面白いです。
Dytica 「ボクらは戦うパーペキヒーロー」
星導が配信で触れていましたが、西組と東組でもかなり歌声の性質が違います。Dyticaは声の親和性が高いのか、同時に歌うと均等に混ざり合って聞こえます。対してOriensのユニゾンは各々の個性が際立つような響きです。
ところで、普段の彼らの配信を見るとOriensは比較的チーム感が強いのですがDyticaは集まるとすぐに(仲良し故の)プロレスが始まります。そう、歌声の性質と本人達の性質が丸っきり逆なのです。面白いですね。
宇佐美・叢雲 「ヒーローなんて時代遅れだ」
佐伯・星導 「なんて言われても ボクを呼ぶ声が」
伊波・緋八 「たったひとりの声が 聞こえるから」
ここも色々と触れたいポイントがあります。まずは宇佐美・叢雲のデュエットから。今回叢雲がオク下担当ということもあり宇佐美の声を支えるような形となっています。高音と低音のユニゾンなんてなんぼあってもいいですからね。
佐伯・星導ペアについてですが、正直ここまで声の相性がいいのは予想外でした。というのも佐伯は前述の通り響きが深く芯の通った声であり、星導は輪郭があまりはっきりしていない軽い質感の声というかなり対極に位置している2人だなと感じていたのでとても驚きました。
今回高音パートを中心に担当している伊波と緋八ですが、この2人に関してはもう相性良すぎ。声が完全に溶け合っていて初見の時は「ここ本当に2人で歌ってる?」と思いました。
因みにこの部分、原曲ではペア歌唱ではなくソロパートが連続する構成となっています。この前提の下でペアで歌おうという采配を行ったということも踏まえるとより味わいが深くなりませんか?私だけですかね?
Oriens 「かませ かませ かまされる前にかませ」
Dytica 「かませ かませ 超必殺のわざみさらせ」
全員 「かませ かませ かまされる前にかませ
いつまで笑えるかなあ」
さあラスサビ前の盛り上がりです。もう少しで終わるので頑張ってください。
ここのOriens→Dyticaからの全員で歌うという流れは何回聞いてもブチ上がります。この徐々にパズルのピースが揃っていく感じ、恐らくオタクはみんな好きなやつです。そしてよく聞いてみると「超必殺」でがなりが入っているんですよね(恐らく星導だと思われる)。ここ個人的気に入りポイントです。
「いつまで笑えるかなあ」は最後の「あ」を伸ばすのですが、ここの部分が2人ずつ4パートのハモりになっているそうです。耳に自信のある方は聞き分けに挑戦してみましょう。私はド素人なので無理でした。
全員 「パーペキヒーロー さあ身を正せ 1抜け四の五の言わせるな
時代錯誤感に目を逸らせ それでもボクら正義の心臓
絶体絶命に身を晒せ 片手間で誰が守れるか
敗色が順当に逆巻けば むしろ高鳴る正義の心臓」
ラスサビ突入、一番盛り上がる部分です。ただ、ここで最高潮になるのもやはり直前パートでの下準備があるからこそです。全体に言えることですが、とにかく曲の中に「ここを聞かせよう」という工夫が詰め込まれているしそれが適格に伝わりやすい。やろうとして簡単にできるものではないです。
【不確定】 「それゆけ 花咲かれば上々」
「たとえ火の中 仰せのままに」
正直ここでは誰が歌っているのか聞き分けができていませんが(おい)(MVに映っているメンバーともまた違う気がする)、多分前半は高音が出るメンバーで後半は低音が得意なメンバーで歌っているのかなと思いました。高低差があると本当に聞いていて楽しいんですよね。
全員 「ボクらは戦うパーペキヒーロー」
伊波 「まだ」
全員 「立ち上がれるさ ヒーロー」
そしてここの伊波です。「まだ」はこの曲の中でも最高音のパートであり、ラストのもうひと押しとして重要なポイントでもあります。彼はこの部分を当初のテイクから更に撮り直したほどこだわったそうで、その努力の結果がこの一言に全て詰まっていると言っても過言ではないでしょう。拍手。
あとがき
ここまで長々とお付き合い本当に、本当にありがとうございました……。
まさか自分でもここまで長くなるとは思わなかったのですが、まあそれだけMECHATU-Aの面々の凄さがあったということで。やっぱり良かったものには「良かった」と素直に言いたいですからね。
この記事を作成している途中にもメンバーそれぞれから後日談があり、正直まだまだ言及しきれていないことが沢山あるのですが、とりあえず今回は歌そのものの良さをメインとして執筆致しました。
「パーペキヒーロー」という楽曲の持つ「個性の違う歌唱者の一体感」という要素を踏まえると、本当にこの歌ってみたは完成度の高いものとなっているなと感じました。
ここまで素晴らしい作品を作り上げてくれたヒーロー達に敬意と感謝を。
もし彼らに興味を持った方がいれば是非とも配信や他の動画も覗いてみてください。歌声同様に全員個性が爆発しています。
【各メンバーのYouTubeチャンネル】
赤城ウェン / Akagi Wen【にじさんじ】 - YouTube
緋八マナ / Hibachi Mana【にじさんじ】 - YouTube
宇佐美リト / Usami Rito【にじさんじ】 - YouTube
佐伯イッテツ / Saiki Ittetsu【にじさんじ】 - YouTube
伊波ライ / Inami Rai【にじさんじ】 - YouTube
叢雲カゲツ / Murakumo Kagetsu【にじさんじ】 - YouTube